(作家コメント) 作品制作のため宮島を訪れたのは三月の中頃であった。満潮の瀬戸内海に浮かぶ大鳥居や厳島神社の佇まいに期待を寄せて早朝の連絡船に乗った。生憎の雨で島々が霞んで見える。 しかし、その細く降る春の雨は社殿の背景となっている山々を白く包み込み、大鳥居と本殿の朱色を鮮やかに浮かび上がらせていた。1400年の時を越え受け継がれてきた荘厳な神域へと誘う思いがけない演出に出会うことができた。