美人画を得意とする若手女流画家の作品です。ここでは、画家の広島生まれの友人をモデルに、桜の木の下でたたずむ着物姿の女性が描かれています。その表情や指先の柔らかさは、女性ならではの魅力をたたえ、冴えた背景色との対比によって、その魅力がいっそう際立っていると言えるでしょう。
作者は、「風に乗って届いた春の便りを受けとり、華やぐ気持ちとはうらはらに散りゆく儚い想いを抱く。その手紙には何と書いてあったのだろう」と語っています。桜といえば春の便りですが、彼女が受け取ったメッセージは、恋の終わりだったのかもしれません。一方、力強い眼差しは、古い季節に別れを告げ、新たに進んでいく彼女の決意を感じます。