自然を描き続けた小野竹喬(1889-1979)の75年に及ぶ画業には、二つの頂点があります。一つは国画創作協会展を主とする大正中期から昭和初期の時代で、もう一つは日展出品作を中心とした戦後の時代です。今回の展覧会では昭和14年の《清輝》発表により、画風が至純な竹喬独自の世界に入ったとの理解の上で、ここを分岐点として、第一章「模索の時代 1889-1938」、第二章「至純の時代 1939-1979」の二章構成で展覧します。各章ともに中盤に展示替えを行い、約200点の作品から竹喬芸術のすべてを通覧できる展覧会となります。
第二章では、竹喬の風景画が単純明快に構成され、竹喬様式が確立されていく過程を細やかにたどります。自然をより深く、親しくみつめ、その息づかいや移ろいを明るく澄んだ色彩で大らかに描きました。
各地に所蔵されている竹喬の代表作が一堂に会するのは、10年ぶりの機会です。ぜひ会場で竹喬芸術の魅力をご堪能ください。