本作では波の模様を背景に桃の花と実が描かれています。3本の枝を束ねるリボンは羽衣のように優美な趣をたたえており、側面には2匹の魚の絵付けが施されています。
作品名の「延壽」には長寿を願い祝福する意味が込められています。それを波山は、安寧秩序が連綿と続くことを表す「青海波」、西王母に由来する吉祥文様であり理想郷を暗示する「仙果」、子孫繁栄や夫婦和合をほのめかす「双魚」で表現しました。他方「エンジュ」という名の植物があり、花言葉は「上品」「幸福」だといいます。
「己の作品を鑑賞する人々の幸せを願った」という波山。本作は、そんな陶芸家の想いを卓越した技量で具象化した傑作です。