氷華磁とは、白磁の器体表面にびっしりと貫入が入った景色を、氷のヒビや華に見立てたことに由来します。中国では貫入のことを「氷列文」といい、波山もその呼称に倣ったのではないかと言われており、同時に昭和初期を代表する作風でもあります。
中国の龍泉窯で作られた重要文化財指定の《青磁鳳凰耳花生》など、波山は若い頃に古陶磁の研究に尽力しました。本作は、その花生と同じ砧型に整形しつつ、鳳凰ではなく、鯉を象った耳で装飾されています。氷華磁を凍てついた滝の流れ、その滝を昇るように設えられた鯉。あたかもそれは登竜門をなぞらえたのかもしれません。