(作家コメント)
夏の日 取材の為 安芸の宮島に向かう。電車と船を乗り継ぎ着いた島は昔訪れた時よりも少し大きく感じた。
世界遺産として歴史的文化的価値があり 景勝地としても日本三景に選ばれているこの地、高低差のある道を歩きながら その空気を先ず体感する。
高台から爽快な風景を眺めながら海岸沿いまで降りていき 厳島神社に伺う。
大鳥居に惹かれて中に入ると、朱色の美しさに心奪われた。
信仰の場であると同時に、水との構成が独特な浮遊感を持たせる建築は造形物としてもそこに立つ者を充分に満足させてくれる魅力がある。
高舞台横を通って向かいの赤眩い廻廊に目をやると、背景には生命溢れる木々の緑、青澄の空 湧く白雲。
高く飛ぶ一羽の鳥の悠々とした姿は それらを眺める自身の眼差しにも似て見えた。