京都の貴船にある川床を描いた作品です。茶屋が暑さしのぎに川へ床机を置いたことに始まり、足を浸して涼むための場所でした。現在は料理も楽しめ、清涼感を求めて訪れる人が後を絶たない、人気スポットとなっています。
作者は、人々の心に訴えかけるような作品を制作の原点とし、花鳥や風景を多く手がけています。日本画の古典的な技術に根差しながら、自分流に磨きをかけ、繊細なタッチの作品を多く生み出しています。
この《瀬音》は夏の谷間の風景です。茶店と自然の緑を溶け合わせる為に絵の具を刷毛で馴染ませ、人が集う部分には暖かさが感じられるように金の砂子を蒔いています。木々の葉が重なり合う音、床の下からのせせらぎは音楽を奏でているようで、詩情あふれる佳品といえるでしょう。