赤黒緑といった鮮烈な色釉は、ややもすれば色調の深みを失いがちです。そのため、陶芸家の間でも好んで使用される釉薬ではありませんが、寛次郎はこの三色を器肌に打ちつけ、そのほとばしる滴のリズミカルな調和によって、自由奔放な躍動美の世界を現しています。これは最晩年の技法であり、三色碗や三色扁壷のように三色と名付けられたものは、ほとんどこの技法が用いられていますが、稀には二色の色釉を施したものを、地釉の一色を数えて三色と称した作例もあります。
また、もともとは円形扁平の壷のことを扁壷と言いますが、寛次郎は、晩年のオブジェ風の作にも扁壷と呼び、丸い壷以外の壷はほとんど扁壷と一括して呼んでいます。