作者は日本の四季を題材とし、季節の移ろいと自然が魅せる彩りや風情に目を向けた作品を多く制作しています。師事していた川端龍子からは、「誤り違うことなく本質を見よ」と教えを受け、物の生命力そのものを絵で表現するために、常に技術を磨いてきました。
本作は、春の宮島の厳島神社に取材した作品です。磨かれた画力を存分に振って細やかに描いており、舞い散る桜の儚さと、コサギが持つ生命力が互いを引き立て合っています。そこに、荘厳な社と春霞が加わり、作品そのものが神秘的な雰囲気をまとっています。春の宮島ならではの美しさが表現された、優雅で気品の溢れる名作です。