作者は趣味である釣りをしている際、釣れない時は自分の身の回りの景色や音を堪能しながら、ゆったりとした時を過ごすそうです。日常のひとつひとつの出来事やいのちに目を向け、それらが持つ愛しさや美しさを作品に昇華しているのです。
この作品では、夕月に照らされ、花を咲かせ始めた梅が描かれています。タイトルである《夕月夜》とは、夕方に見られる月を指しており、淡い月明かりが梅の儚さと美しさを引き出しています。蕾は今にも開花しそうなものから、まだ芽吹いたばかりのものまで描かれており、梅の花を通して時間の流れを感じ取ることができます。出会うもの全ての出来事に意識を向ける、作者の愛情が込められた作品です。