現在、京都在住の画家にとって、京都の町並み自体が博物館そのものであり、そこで多くの知見を身につけ、インスピレーションを磨き、今では「花の画家」と呼ばれるようになりました。様々な花の作品を描いている中でも桜は人気のあるモチーフです。「三日見ぬ間の桜かな」と言われるように、開花時期が短く、画家はそこに注目し、喜びも悲しみも刹那に「散る美しさ」を表現しようと試みました。
この作品は月夜の桜の、蕾、半開き、満開、散る瞬間までが描かれており、一枚の絵で花の生涯を見ることができます。作者が花鳥画のテーマに掲げている「生命賛歌」そのものであり、まさに散り行く花のドラマを再現している佳作といえるでしょう。