日の光に照らし出された紅白の臥龍梅を描いた作品です。白梅は、苔生した幹が螺旋を描きながら上へ上へと育つのかと思いきや急降下し、力強くうねりながら地表すれすれで再び空へと伸びていくかのよう。その花は、写実的な樹皮の表現とは対照的に、白く霞んで幻想的な趣をたたえています。他方、紅梅は、右上に軽快な様子で描かれており、白梅が醸し出す雰囲気を引き立てているかのようです。
画家は、この月知梅について、次のように語っています。「出合ったのは、1988年に宮崎の高岡町を訪れた時が最初です。典型的な卧龍梅の力強いフォルムに圧倒されながらも、夢中でスケッチを続けました。地に伏せた枝から、再び空に手を伸ばすように伸び上がる、たくましい姿に魅せられました。・・・奔放に逞しく、また踊るような枝振りを屏風一面に描くときの、時間を忘れる情熱と感動は今でも懐かしく思い出されます。・・・今でも、梅の大作を描く折には、常に「月知梅」を意識して描いてしまいます。・・・やはり『月知梅』の天に伸び上がる枝の生命力に惹かれてしまうのです。」