弊社では、コレクションの中で80数点に上る古径の素描を所有しています。本作はその中の1点。素描コレクション中、最大のものです。牡丹の花弁、葉、枝、幹、支柱が、鉛筆で丁寧に描き込まれており、色の濃淡も丹念に描き出されています。
本作は、二曲一隻屏風の下書きではないかと考えられ、うっすらと方眼の線が引かれ、レイアウトを決定するのに緻密な計算がなされたことがうかがえます。大輪の花が咲き誇っているものの、そこはなかとなく安定感が漂っているところに、卓越した技量が垣間見えることでしょう。
他方、小林古径の絶筆は白い牡丹(小林古径記念美術館蔵)でした。そのことからも牡丹に対する古径の並みならぬ意気込みを感じられます。