作者は近年、母と子を題材とした作品を手掛け、卓越した人物表現で高い評価を得ています。
この《蓮華》は、蓮の花を持つ女性が描かれた作品です。沼池に美しい花を咲かせる蓮は、拈華微笑などの伝承でも知られるように、古くから仏教にゆかりがある花です。
蓮を持った女性の姿には観音様の面影を想起させ、凛とした表情や柔らかい指先の表現が秀逸です。
また作者は、2018年の個展のあいさつ文で、『大切な生命との別れを沢山経て、守りたいものでも「守れない」という事を知りました。だからこそ、命を包む優しさや温もりを描き続けていきたい』と語っていました。
作品から伝わる生命の尊さが魅力的な作品です。