鉄薬の器胎に、筒描の技法で草花を描いた壷で、寛次郎が後期に、よく手がけた技法を知ることができる作例です。
鉄薬とは、酸化鉄を多分に含んだ彩料、釉料のことををいい、鉄砂とも称さます。一方で、天目、海鼠、柿、蕎麦、飴などの釉の総称で、釉料としてだけではなく、その渋い色味が好まれて上絵付にも多く用いられています。他方、筒描は、「絞描」「イッチン盛り」「イッチン掛け」とも呼ばれ、江戸期の丹波焼などに見られる手法のことです。竹筒に注口をつけたものや、柿渋を引いた紙を漏斗状にしたものなどの中に泥漿を入れ、器肌に盛り上げた線で文字や文様を描きます。