作者
森田 りえ子 MORITA Rieko
作品名
春朧朧 Pale Wisteria in Spring
制作年
平成元年
素材・技法
紙本彩色
表装
額装
サイズ
194.0×261.0cm

今を盛りとばかりに咲き誇る藤を描いた作品です。小さく可憐な花は初々しく、苔生した古木の様と互いに引き立て合っています。他方、その可憐な花は「藤色」を引き合いに出すまでもなく、通常、淡い紫色で表現されます。しかしここでは白い花が多数を占め、それは降り注ぐ晴天の日差しによって、光のベールが架けられたようにも見え、幻想的で詩的な趣を醸し出しています。
この藤の木は、福岡県黒木の素盞嗚(すさのお)神社に取材したもので、天然記念物に指定されています。画家の描く藤はこの名木を基にしているとされ、『樹木の間に描かれた、霞がかった空間の中に何か神々しいもの』が感じられると評された作品もあります。
この《春朧朧》は、晩春から初夏にかけて見頃を迎える名木の、見えるものだけにとどまらず、周囲に漂う神聖な空気さえも描写した秀作と言えるでしょう。

  • 名所
  • 女流画家
  • 平成
  • 花鳥