画家は、日本文化の伝統を今に受け継ぐ舞妓や、現代日本の若い女性を主題とした作品を発表する一方で、とくに四季折々の自然の風物を描いた花鳥画が高く評価されています。艶やかで活力あふれる作風は、次代を担い得る魅力を備えていると言えるでしょう。
この《楓・常磐樹屏風》は京都妙心寺の塔頭・麟祥院の方丈庭園で取材したもの。画伯は冬枯れの楓の大樹に目を留め、あらためて翌年の紅葉の最盛期に訪れて写生を行い、この屏風を完成させました。その時に見た「落ち葉を目前にした一瞬の焔のような紅葉」と常緑の松とを、あたかも光琳の「風神・雷神」のように対峙する構図にまとめ上げたとの由。画伯の代表作と呼ぶにふさわしく、その一瞬の感動が全て表現し尽くされています。