画面の中央に木製の橋がかかり、その上下に群生する白と青のハナショウブを描き分けています。簡略化された橋と、大振りに描かれた葉が、かえって写実的な花弁を引き立てていて、緻密さと大胆さが共存しているとも言えるでしょう。
この《仲夏》は、江戸時代の絵師・尾形光琳《八橋図屏風》(メトロポリタン美術館蔵)にインスピレーションを受けた作品であり、画家一流のオマージュであると考えられます。光琳の《八橋図屏風》では、群青のカキツバタの群生が描かれているのに対して、この《仲夏》では、ハナショウブが描かれています。この年、58歳を迎えた画家は、この花にどのような想いを込めたのでしょうか。