ここでは、青々とした大振りの葉をつけた、大輪の牡丹が描かれています。淡いピンクの花弁は、緑の葉に良く映え、また古木の風情をたたえる苔むした幹は、長年にわたって花をつけてきたことの証です。「花の王」の呼び名に相応しい、品格さえ醸し出していると言えるでしょう。
牡丹について、画家は次のように語っています。「昔から多くの作家がこのテーマに挑戦しています。最初はこの花の持つ豪華な美しさに目を奪われますが、私は、大地に根を張り、天に向かって大きく広げる葉の存在に愛おしさを感じます。「花より葉っぱ」に時間をかけてじっくり観ていると、わずかな風にそよぐ葉のざわめきや、大地や太陽からの恵みをたくわえ、しっかりと花を支える枝や茎、雨風から蕾を守る若葉色の愛らしい萼の存在、そんな脇役たちにスポットを当てて描いていきたいと願っています」。